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人間は、母親のお腹のなかで命を授かってから誕生するまでに、生物の進化の歴史を再現していくといわれています。初期の胎児は生命の源である海に棲む魚類に似た姿をしていますが、やがて水辺で生きる両生類のようになり、さらに陸上生物である爬虫類、哺乳類、そして最終的にヒトの姿へと進化していくのです。人体に刻まれた生物進化の足跡、なんだか神秘的ですね。この神秘的で不思議な生物進化の足跡、じつは私たちの脳内にも見ることができるのです。
人間の大脳は大きく3層に分かれています。一番内側には「旧皮質」と呼ばれる層があり、その上には「古皮質」が、そして一番外側は「新皮質」と呼ばれる層で覆われているのですが、内部の層ほど、祖先の脳に近づいていくといわれています。
一番内側にある「旧皮質」は、“魚類の脳”といわれています。水中に暮らす魚類は、五感のうちではおもに聴覚と嗅覚を働かせて生きているので、五感のなかでも初期に発達した感覚が聴覚と嗅覚だったといえるでしょう。「旧皮質」の外側にある「古皮質」は“両生類の脳”。陸上での生活を知るようになった両生類は、触覚を発達させていくようになりました。聴覚と嗅覚の次に機能の進化を遂げたのが、触覚だったというわけです。そして一番外側の層である「新皮質」は“爬虫類と哺乳類の脳”。陸上での生活がメインとなる爬虫類や哺乳類は、生きるうえで太陽の光の影響を大いに受けるようになります。そこで発達したのが視覚だったのです。
人間が五感によって得る情報は、その9割が視覚情報だといわれています。しかし、両生類時代や魚類時代に発達を遂げた四感が感じ取る、残り1割の“目に見えない情報”とは、“原始生命の記憶”につながるとも考えられるのではないでしょうか。
たとえば私たちは、寄せては返す波の音を聴覚で感じ取ると、なぜか心が癒されます。波のリズムは「1/fゆらぎ」ともいわれ、心臓の鼓動や脈拍といった生体リズムに近いともいわれているのですが、そのリズムを感じ取っているのは、私たちの脳内にある“魚類の脳”ではないだろいうか、とも考えられます。“原始生命の記憶”が脳内に残っているからこそ、私たちは本能的に海を“母なる存在”と感じ、そこに癒しを覚えるのかもしれません。
私たちは目に見える情報ばかりに頼りがちですが、自然がもたらすリズムなど、“原始生命の記憶”を呼び覚ます“目に見えない情報”にももっとアクセスして、生命力にあふれる感性を開花させていきたいものですね。