脳と心のエトセトラ

vol.31 「落書き日記」のススメ

update:2007.3. 8

近年、メールやブログを通じたコミュニケーションがすっかり定着しました。たった一言お礼を伝えたいとき、電話をするほど親しくはないけれどコミュニケーションをとりたい相手に連絡したいとき、ネット上だけの関係でもいいから友達を作りたいとき…。ITを利用したコミュニケーションツールは大変便利なものだといえるでしょう。
しかし一方で、手書きで文章を書く機会がめっきり減ってしまったのも事実です。

じつは手書きで文章を書くという作業は、脳全体を効率的に活性化させる有効な手段。ザラザラした紙の感触や紙をペラペラとめくる作業は、五感のうちの聴覚や触覚を刺激します。そしてペンを持って文字を書くという作業は、運動野と呼ばれる脳の部位を活性化させるのです。

さらに漢字を書くときは側頭葉(頭部側面の脳)から頭頂葉(頭頂部にある脳)が働き、ひらがなやカタカナを書くときは、頭頂葉のみが働くのだとか。また、文字を美しく書こうとするときには、後頭葉(後頭部の脳)にある視覚野が活性化。もちろんパソコン上とは違い、紙の上ではコピーペーストもデリートも簡単にはできません。頭の中である程度文章を組み立てなければならないため、前頭葉にある知性をつかさどる脳もフル稼働するのです。つまり、手書きで文章を書くという作業は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉という大脳皮質のほぼ全体を使うことになるといえるのです。

パソコンで文章を書く作業だって、手を動かして文章を組み立てるのだから、脳を活性化させるのでは…と思われるかもしれません。
しかし、文字を書くという指先の複雑な運動に比べると、キーボードを打つという単調な作業は脳にとって刺激的とはいえません。また、ワープロの変換機能に頼りすぎてしまうと、「この言葉って漢字でどう書くんだっけ?」と考える機会も奪われ、記憶する力も、記憶を引き出す力も衰えてしまいます。とはいっても、今どき手書き文書でビジネスを回すなんて無理。メールだけじゃなく手紙を書くようにといわれても、やみくもに手紙を送ったりしては相手に気味悪がられるだけです。

そこでおすすめしたいのは「落書き日記」。内容は、お気に入りの歌詞を写すだけでもよし、今ほしいものリストを箇条書きにするのもよし。あくまで落書きでかまいません。何でもいいので、毎日手を動かして文字を書く習慣を身につけてみましょう。「落書き日記」のポイントはふたつ。ひとつは文法や文脈にとらわれることなく、脳に思い浮かんだ言葉をそのままどんどん書き連ねていくこと。もうひとつは、わからない言葉が出てきたときはなるべく辞書を引くこと。いずれにしても「文章をかかなければ」と力まずに、子どものころに楽しんだ落書きをする気分で、気軽に手書き文字に親しんでみてください。

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