脳と心のエトセトラ

vol.22 母性を生み出す脳内回路の不思議

update:2007.1. 5

年末になり、今年一年を振り返る番組が各局で流れています。なかでも特に焦点を当てられているのは、いじめや少年の自殺、殺人。少子化などから問題視された"親子の関係"。
そこで今回から年末年始の特別連載として3回にわたって、脳科学から見た"親子の関係"についてお話してみたいと思います。

第1回目のテーマは「母性を生み出す脳内回路の不思議」。

女性の脳は、妊娠や出産を経て大きく変化するといわれています。

そのひとつが「母性回路」と呼ばれる脳内の神経系。「母性回路」とは、ホルモンの分泌をコンロールする器官として知られる視床下部の前部にある部位。この「母性回路」が、妊娠時に分泌されるホルモンによって活性化すると考えられているのです。。

「母性回路」は、"大金を手に入れた""意中の異性とデートできた"といったような、何かしらの努力が報われて報酬となったときに喜びを感じる脳の部位「報酬回路」にもつながっています。そして母親が赤ちゃんの鳴き声を聞くと、「母性回路」と「報酬回路」のすべてが反応することがわかっているのです。ちなみに父親が赤ちゃんの鳴き声を聞いたときに反応するのは、知性をつかさどる脳である「大脳新皮質」なのだとか。わが子の鳴き声をあくまでも理性的に捉える父親に対し、母親には子どもの異変に素早く反応し世話をすることが本能的な喜びとなる脳内回路が備わっているのです。

また、女性の脳内を機能MRIという装置で調べた結果、女性が男性に対して抱く恋愛感情と自分の子どもに対して抱く愛情は、ほぼ同質のものだということもわかりました。これはつまり、恋愛感情を作り出すホルモンには中毒性があることから、母親の子どもに対する愛にも中毒性があるという意味になります。女性の脳には、子どもの世話をして愛情を注ぐことに対し中毒になってしまうくらい心地いいと感じてしまうシステムが備わっているのです。

なぜ女性の脳には、そのようなシステムがあるのでしょうか。
それは太古の昔より、子どもを育て、子孫を残していくという仕事が人生でもっとも困難な仕事だったからです。成し遂げ難い仕事だからこそ、進化の過程で子育てに喜びが感じられるような報酬システムが女性の脳に構築され、困難を乗り越えてでも子育てが達成されるように遺伝的にプログラムされたというわけなのです。
それだけ子育てとは重大で尊い作業だといえるでしょう。

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