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前回、“笑う”表情と“泣く”表情が原始的には脳内の同じメカニズムによって作られていたことをお話しました。かつて、相手への服従を表していたその表情は、人間が社会を持ち、複雑なコミュニケーションを交わすようになるにつれ、喜びと悲しみを表すふたつの感情表現として使い分けられるようになっていったのです。
さて、この正反対ともいえるふたつの感情表現には、生理的な共通点が多くあります。そのひとつは、自律神経の活動を活性化させる作用。自律神経とは、交感神経(興奮を促す自律神経)と副交感神経(リラックスを促す自律神経)の2種類によって成り立つもので、双方がバランスよく活動することが大切。
しかし多忙で緊張状態が続きがちな現代人は、交感神経ばかりが活動してしまいがちなのです。そうした自律神経の偏りが、笑うことや泣くことによって緩和されるのだといいます。
たとえば人は笑うとき、誰かが面白いことをいう、というような「笑い刺激」によって交感神経が活発に働き、心身を興奮状態に促すホルモンであるアドレナリンが分泌されます。そしてその直後に、ハハハと口を開けて笑う身体運動が起こるのですが、ここで自律神経は副交感神経へと一気に切り替わり、全身はリラックスモードに。
泣くときも同様で、涙を流すことによって交感神経が優位な状態から副交感神経が優位な状態へと変わるのです。このように交感神経と副交感神経を同時に刺激し、緊張状態から即座にリラックス状態へと切り替わる生理的作用は、心身に癒しをもたらすもの。笑うことや泣くことには、セラピー効果があるともいえるのです。
ほかにも、幸福感をもたらすホルモンであるエンドルフィンが脳内に大量に分泌されることや、ストレスホルモンの減少につながること、体内の免疫機能が上昇することなど、笑うことと泣くことに共通するセラピー効果はたくさん。日ごろ何かとがまんが耐えず、不満をため込んでしまっている人は、ぜひ思いっきり笑い、思いっきり泣いてみてください。重くのしかかっていた何かが、スッと抜けていくのを感じられるはずです。