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あふれんばかりの言葉が短いメロディの中に詰め込まれ、そのメロディのひとつひとつはすべて韻を踏んでいる。一見脈絡のないフレーズの応酬のようであっても、強いメッセージを放っている・・・。言葉遊び的な要素とインプレッシブなメッセージ性とを同時に兼ね備えるラップの歌詞は、言葉のセンスに卓越した人でなければとても生み出せそうにないものです。
人間が言葉をあやつるとき、脳内では膨大な数の単語を検索し、ふるいにかけ、選んだ単語を組み合わせて文脈を作り、話したり書いたりするという作業を瞬時に行っています。この言語処理作業がスムーズに行われるために、脳内では“意味が似ている言葉”“共通点を持つ言葉”などを複数集めて関連づけ、言葉のグループにして記憶しているのです。
この記憶方法によって、私たちは無数にある言葉のなかからより適切な意味合いを持つ言葉のグループを探し出し、グループ内の類似語をたどりながら、最終的に目的とする言葉を選び出しているのです。
しかしラップなどに見られる「韻を踏む」という技法は、意味的な関連性ではなく、音声的な関連性をもとに言葉が選び出されなければ成立しません。これは、通常私たちの脳内で行われている言語処理作業とは異なる方法であるため、難易度が高い作業のように思われます。
ところが幼児の脳内では、意味的な関連性ではなく音声的な関連性をもとに言語処理作業が行われているのだといいます。子どものころ、好きな歌手の歌を見よう見まねで覚えたのはいいけれど、歌詞中に出てくる言葉を似たような発音の別の言葉と勘違いして覚えてしまい、まったく意味の通らない歌を歌っていた・・・なんて経験はないでしょうか。これは、幼児が言葉を音声で関連づけて処理しているために起こることなのです。
子どもの脳はフレッシュで既成概念がなく、言葉に対する感覚も純粋です。そのため、意味や概念で論理的に思考するのではなく、“音の楽しさ”で言葉をあやつることのできる詩人だといえるでしょう。
だからこう思うのです。「韻を踏む」という言葉の音遊びをさらりとやってのけるラッパーの脳内は、子どものように純粋でフレッシュなのだろうと。