ライフラーニングセンター:コラム

第138回 村上 理奈 エッセイ

2008.5.21

■今週の素敵な言葉

「見えないからこそ教えられることがある」   
全盲の中学教師、新井淑則(よしのり)さんの言葉


先日、心温まる感動的なニュースを見ました。
網膜はく離で全盲となった国語の教師、新井淑則さん(46歳)が4月15日、埼玉県長瀞町立長瀞中学校で、盲導犬のマーリンと共に、15年ぶりに普通学級の教壇に復帰したというレポートでした。


ここで、新井先生のことを簡単にご紹介します。
先生は中学の国語教師として教壇に立っていましたが、1988年に網膜はく離を発症し、右目を失明。1993年に県立秩父養護学校へ異動しましたが、徐々に左目も光をわずかに感じる程度になり、とうとう2年後に左目の視力も失い、休職を余儀なくされました。


「目が見えないのに何ができるんだ」
「生きる意味がない」
自暴自棄になり、半年ほど家に閉じこもり、3人の子どもとも疎遠になり、立ち直りを促す周囲の声も耳に入らず、一時は自殺も考えたそうです。


そんな夫の姿を見かねた妻真弓さんが、様々な分野で活躍する視覚障害者の情報を集め、普通高校で教える視覚障害者がいることを知ります。視覚障害を持つ高校教師との出会いを機に、かすかな希望を頼りに、半信半疑で歩行や点字の訓練といったリハビリを始め、病の発症から11年目の1999年、秩父養護学校に復職しました。


それから5年後からは県立盲学校でも教えていましたが、「天職と思った職場で生きざまをぶつけたい」との思いは強く、中学校に戻りたいという気持ちは日増しに募っていったそうです。


視覚障害の教師が普通小中学校で勤務すると、補助教員が必要になる場合が多く、予算もかかるため、受け入れる自治体が少ないのが現状の中、新井さんはあきらめずに県教委や県議会に要望する一方、依頼されて小中学校で講演し、自らの体験を語りつづけていました。そんな中、講演を聴いた長瀞町長が「ぜひうちに」と手を挙げ、長瀞中学校への赴任が決まったのだそうです。


このレポートを見ていて、私は本当に心が熱くなりました。
自分の身に起こった病のつらさは、究極はその方にしかわからないものかもしれませんが、想像しただけでもどれほどつらい日々があったか、と胸が痛みます。
それでも前を向いて生きていく、夢を「持ち続ける」・・・
何度も何度も自分に言い聞かせて、意識のフォーカスを「目標」に向け続けていかれたのでしょう。


生きざまそのものが本当に美しい、と感じました。


「わたしは皆さんの姿が見えません。声だけが頼りです」。
生徒を声で識別できるようになるために、ひとりひとりの声を録音して何度も聞いて覚えてらっしゃる先生の姿が印象的で、生きることに全力で取り組むその姿に、大きな勇気をいただきました。


村上理奈


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